NO.329                             By Yankさん    (2017.12.10)

   なぜか”売り切れ”と表示して販売しない自販機、 原因は? 中はどうなっているのかな・・・・?

 ドリンク用自動販売機の修理レポート

 ども、Dynaです。

 皆さんは、ドリンク用の自動販売機を利用されていますか? 当方、ドリンクはお安い近所のスーパーなどで買って

います。でも、スーパーに行けない時とか、仕事で現場に行っている時とかは、自販機の缶コーヒーを買いますよね。

 今回は、その缶コーヒーを何と¥70で販売されているという「ボランティア精神」に溢れた「格安ドリンク自販機」が、

在庫があるのに、なぜか”売り切れ”を表示して、販売しなくなってしまうという、珍しい?現象を修理したYankさんから

の詳細レポートを送って頂きました。ありがとうございます。

 PCだけでなく、前の電子レンジとか今般の自販機のレポートは、回路は違っても大きくみれば同じ電子機器なので、

レポートはとても役に立つと思います。というか、自販機の中ってどうなっているのか、大変興味がありますよね。

 それでは、早速拝見しましょう。 

                                                              By Dyna   メール


1、故障した自販機


 先日、近所の車屋さんで、飲料用自販機が壊れて困っているという話を聞きました。今年2月にその車屋さんでは高

機能電子レンジを社長さんと一緒に私は直したのですが、その時、ジャンクPCの経験が役立ちました。原因は膨らん

で容量抜けした電解コンだったからです。その詳細については以下のリンクにあるとおりですが、今回は電解コンでは

ありませんでした。でも、やはりPCと類似点はありました。

http://akipara2.sakura.ne.jp/new_page_822.htm

 


 自販機は下の写真のとおり、幅約1m、高さは2mほどの大きさのもので、故障したままでは、役立たずの大きな箱で

しかなく、準備中の張り紙が貼ったままになっていました。でも、”こども110番の家”という、いざという時は、子どもを

守る場所であることを示す看板プレートを貼っておくものとしては使えています。

 



 写真1:故障して準備中の自販機

 



2、煽てられてノーとは言えず


 その自販機は中に缶コーヒーやペットボトル飲料がまだ沢山残っているのに、”売切れ”が表示され、お金を入れても、

返却されてしまうという故障でした。これでは商売になりませんね。ここの社長さんはオシロスコープ等の使い方に随分

と慣れてきて、電子関係も得意分野の一つになりつつあります。それで、この自販機も自前で修理してみようと頑張っ

て自販機の自己診断機能を使ってエラーコードを読み、”温度センサー異常”が原因とまでは把握済みでした。しかし、

その先が上手く行かず、美人女性事務員さんから私に相談があったのです。その言い方はこうでした。


「社長さんが頑張っているけれど、苦戦中で、Yankさんじゃないと無理かも。」


 私に期待されているとは分かっても、ノーと言えないように煽てられているのだろうという思いがあった一方、自販機

の中はどうなっているのかなという好奇心もありました。もしかすると、私の力でも対処できる範疇かもという思いもあ

って、また後学のためにもなるかと、ちらっと見てみることにしました。


 その事務員さんは事務仕事だけでなく、力仕事もこなす人で、重いタイヤを運んだり、自販機への飲料ボトルや缶の

補充担当でもあります。ダンボール箱に入った飲料の箱は男でも重く、女性がこれをハンドリングするのは大変です。

そういう頑張っている美人から言われると、余計に断れないものですよね。只でさえ、女性から頼まれると、男としては

ノーと言えないもので、下のリンクの上2つは、PCとモニターの復活事例ですが、頑張っている若い女性たちからの依

頼でした。何とかそれらを私でも直せて、とても喜ばれたので、断らなくて正解でした。


 そして、その後、PC系の修理にそれらの経験が役立っています。3つ目のリンクは親戚の男性からの依頼でしたが、

素早く対処できたのは類似の経験が1番目であったからです。経験はこれら以外にもいろいろなPCの復活に役立って

います。ジャンクを触る男は女性にモテないとよく言われますが、そうでもないこともあるのです。


http://akipara2.sakura.ne.jp/new_page_756.htm

http://akipara2.sakura.ne.jp/new_page_767.htm

http://akipara2.sakura.ne.jp/new_page_826.htm


(余談)

 余談ですが、定年直後に名古屋で行われたCOP10という国際会議にて、私は国連事務局でボランティアをしていまし

たが、PCが不調だったり、ACアダプターを失くしてしまい困っている会議参加者たちがいました。その最初の一人は、

無線LANが不調で、本国とのやりとりができないと相談してきたキリバス国の女性代表でした。私はある方法でそれに

対処したところ、その女性代表からも、後で来日したキリバス国の環境大臣からも、とても感謝されましたが、それだけ

で済まず、大変なことになってしまいました。

 もし、皆さんに興味があれば別途この件を書かせてもらおうかと思いますが、PCと外国語を少しばかり解したことで、

女性にモテモテという経験でした。私のような老人が今頃、女性にモテても、どうしようもないでしょうが、もし若い頃だ

ったら、人生が変わっていたかも知れません。でも、一つ言えることは、定年後も飲み続けていた心臓や血圧の薬を、

もう飲まなくて良いと主治医から言われるくらい元気になれたのは、昔取った杵柄が役立ち、いろいろな人から感謝さ

れ、自分でも達成感を感じているからかと思います。特に女性から感謝されると達成感は高いものです。

 



3、社長さんたちの努力と判明していること

 まだ商品が中にあるのに、”売切れ”表示が出てしまう自販機の原因について、社長さんは補充担当でもある事務員

さんと、すでにあれこれ調べていました。そして以下のことはすでに把握されていました。


1,商品が無くなったことを検知するセンサーは機能している。

2,”売切れ”の表示が出るまでに、通電開始後すぐではなく、ある程度の時間がかかる。

3,夏の間は、まずまず調子は良かったが、このところ寒くなってきて、商品をホットにする設定にしたら、短時間で

  ”売切れ”となる。

4,一旦、電源を落とし、再通電すると、正常になるが、その内、”売切れ”となってしまう。その時間はその日の気温

  で変わり、一定ではない。

5,自己診断機能がこの自販機にはあり、エラーコードの意味するところは、温度センサーの異常。

 



4、何が根本原因?
 
 温度センサーがどこにあるか分からず、また正常値がどの範囲かというテーマに社長さんは挑戦しようという段階で

した。美人事務員さんから私に相談があったとき、すでに上の5までは分かっていたので、私は温度センサーを探すと

ころから始めれば良く、今年の2月に経験した電子レンジのことを思い出してしまいました。あの時も自己診断機能が

温度センサーの異常を示したのに、現実とは矛盾することからマイコンの動作が不安定かと思い、電源のリップルを

調べようとしたとき、頂部の膨らんだ電解コンがあり、簡単に直せてしまいました。



 写真2:扉を開くと

 



 写真3:扉の内側

 



5、柳の下にどじょうは2匹いなかったけれど

 今回ももしかして、”柳の下にどじょう”の類の話かと思い、また電源部を私は調べ始めました。マイコン用と思われる

3.3Vと5Vラインに異常はなさそうで、その他、8Vというラインもあって、ここも良く、他に24Vというラインがありました。

 ここには300mV程のリップルがあり、このラインを追うと、3つあるファンに繋がっていて、ファンの一つが回っていない

ことに気付きました。棒で羽根を回してみたら、ファンは回り出しました。しかし、やがてまた止まってしまい、どうもモー

ターの力が落ちているか、軸受けが駄目になりかけている感じでした。


 この自販機は、下の写真のように、内部が左、中、右と3つのブロックに分かれていて、それぞれを冷蔵モードかホッ

トモードに個別というか、庫別に選べるようになっており、ファンはそれぞれのブロックにありました。回転が不安定なの

は、右のブロックのものでした。その下の写真は3つのブロックと中を開いて、取り外したファンです。手で羽根を回す

と、引っ掛かりがあり、また重く、明らかに軸受けに問題のあることが伺われました。



 写真4:NGなファンのあるブロック ー このプラスチック板の奥にファンがあった

 



 写真5:冷却・加熱部のファンを引き出したところ



 ファンの近影はこのとおり、NMB-MAT MODEL 3610-05W-B50 と読め、定格は、24V 0.2A とあり、4.8Wの消費電

力であることが分かります。



 写真6:自販機のファン近影

 



6、考察し、故障メカニズムを推測してみる

 これがまともに回らないことで、どうして”売切れ”になるか、また温度センサー異常になるか、社長さんと一緒に考え

てみました。


ファンが回らない。
  ↓
冷気であれ暖気であれ、空気が循環しない。
  ↓
飲料の温度は変わらず売り物にならない。
  ↓
ファンの近くには温度センサーらしきものがあるが、空気が流れないことで、このセンサーは過冷か過熱し、異常状態
となる。
  ↓
温度センサーの異常を示すエラーコードをマイコンがセット。
  ↓
マイコンは”売切れ”というモードを表示し、お金をお客さんに返してしまう。



 ということになるのでは、という仮説を立てました。

 上の写真は配線をカットし、ファンを引っ張り出して写していますが、奥に冷却のためのエバポレータのフィンが見え、

ファンはその手前の四角い窓と、ファンで隠れて十分には見えないヒーターのある金属ケースの間にサンドイッチする

ように取り付けられていました。

 



7、代用ファンで検証してみる

 仮説どおりなら、ファンの交換で直ると思われ、代用できそうなファンで確認することにしました。私は自宅に幾つかの

ファンをストックしていますが、その目的はファンの故障で壊れたいろいろな電子機器を直すことがときどきあり、そのた

めです。

 PCのファンが駄目になって交換が必用になったこともありましたが、以前に紹介した、熱中症対策の襟首ファンは、

爆熱CPUと異名のあったプレスコットを冷やすためのもので、廃棄するPCから外したものでした。

http://akipara2.sakura.ne.jp/new_page_809.htm


 また、下の写真は近所の織物会社にある機械とその制御装置ですが、ファンが故障し、熱暴走するようになり、私の

手持ちのファンで対処したものです。電子機器に熱は大敵で、ファンの故障が機器全体の故障になることも多く、ファン

は要注意な部品です。ファンには軸と軸受けがあり、この部分の寿命が国産でも5万時間程度しかないものが大半です。

輸入ものでは遥かに短寿命であったという経験も私には複数回あります。

 



 写真7:織物会社の機械

 



 写真8:制御装置内の故障したファン

 



8、代用ファンは12V 4.7Wのもの

 自宅に戻り、私の手持ちのものの中に、12V 4.7Wという同じ92mm角サイズのファンがあり、これで試すことにしまし

た。ファンは、消費電力から抵抗値を計算すると30.6Ωほどになり、この値に近い手持ちにあった33Ω 3Wの酸化金属

皮膜抵抗をシリ・パラ接続して熱と2倍ある供給電圧に対処できるようにして使ってみることにしました。

 
 24V電源と直列にこのシリ・パラ接続した抵抗を挿入し、ファンには並列に680uF/25Vの電解コンを入れて、電圧の

微変動を少しでも吸収するようにしてみました。ファンの両端で実測すると、起動時は12Vをやや下回るものの、回転

上昇とともに殆ど12Vに収束します。

 



9、さあ、準備中の紙は外そう

 抵抗と電解コンをプラスして、ファンを自販機に組み込んでみたら、自販機は全く問題無く動作するようになりました。

自販機の24Vラインの負荷電流が0.2A弱増えてしまう弊害について気になり、24Vラインの電圧降下や、リップルの増

加量をチェックしたり、電源部の発熱を手で触ったりして簡易的に調べましたが、特に異常を感ずることは無かったの

で、様子見の状況です。

 「取り敢えず、正規のファンに交換するまでの間、このまま使ってみるよ。」とは社長さんの弁でした。

 あれから3週間が過ぎましたが、私が用意したファンのままでも問題無く動作しているそうです。70円という破格の価

格設定もあり、飲料がとてもよく売れているとのこと。本当の売切れで、美人事務員さんは補充に忙しいそうです。

 私が捨てずにストックしておいたファンの一つが自販機の故障原因の特定と検証に役立ちました。まだファンはその

ままというのが少々気になりますが、後は電子技術に慣れてきた社長さんにお任せします。



 写真9:安めの価格設定と子ども110番の看板・・・70円という文字が手書きなのは、自販機には、80円未満は活字

がないから。

 



10、社長さんは偉い

 ここの社長さんが自販機を設置した訳は、”こども110番の家”という写真の看板シートを張りたいものの、適当なも

のが道路脇に無かったからのようです。自販機を店の建物脇ではなく、道路寄りに置き、その看板が目立ちやすいよ

うにすることと、道行く人に気楽にかつ安価にコーヒーでも飲んでもらおうという意図が、社長さんにはあったようです。

地域社会の中で、商売は街の人達との信頼関係の上に成り立つということをモットーにしている社長さんだけあって、

自販機は儲けるためというより、地域サービスというボランティア精神もあっての設置のようです。

 



11、この自販機は

 マイコン部はPCとはかなり異なり、産業用マイコンボードの類で、CPUはサンデンという自販機メーカーの会社名が

入ったカスタム品が使われています。CPUは3.3V動作、周辺ICは5Vで動作しているようです。パソコンと互換性は全く

ないでしょうが、電源部には、12Vの代わりに、8Vがあり、24Vがファンやソレノイド用にあり、形状的には細長いもので

す。

 この自販機はリースではなく、買取りのものでした。新品時の価格は軽自動車が買えるほどのようです。リース上がり

の整備した中古品を社長さんが購入したもので、新品に比べれば、安かったようですが、設置にはそれなりの費用が

かかったそうです。何しろ台風等で倒れないよう、また盗難対策もあって、下をコンクリートで固め、アンカーボルトを

打ち込み、しっかりと地面に固定しないといけません。また電気配線を長くしないといけないということもありました。

 修理会社との保守契約は費用の点でせず、壊れたら社長さんが自分で直すという考えでした。缶コーヒーを70円で

売るにはそうせざるを得ないようですが、電子系に自信を付けてきていた社長さんであり、壊れたら、可能な限り頑張

ってみるという意気込みだったようです。私と一緒にトラブルシュートして、「良い勉強になった。」とは社長さんの弁で

したが、動作するようになるまでのことを楽しんでいるようでした。

 


 ども、Dynaです。

 レポートありがとうございました。自販機の中の構造と修理の考え方や実例が分かって、大変勉強になりました。

 当方が、自販機の修理をすることは、おそらく無いと思いますが、様々な機器でFANの停止により異常な状態になる

ことが大変良く分かり、今後に役立つと思います。

 ただ驚いたのは、金銭をあつかう機器のため、FANひとつと言えども、結構複雑なシステムを構築しているのにはび

っくりです。まあ、当たり前でしょうが・・・・。

 PCで修理をする当方ですが、実際は修理というよりもパーツセットの交換、つまりアセンブリです。これはPCに詳しく

無い方からは「さすが!」と言われますが、PCに詳しい方からすれば、単なるプラモデルのパーツ交換のようなもので、

本来の修理とはほど遠いと思われているはずです。

 昔の真空管アンプとかの修理なら、1つひとつの抵抗やコンデンサーについて原因を追及して、1個単位のパーツ交

換で修理します。しかし、PCのように巨大な回路となると、確かにアセンブリにしないと非効率になるため、また極小な

世界なので仕方ないと思います。

 ただ、原因追及と、それに合わせた最小単位の修理方法を身に着ければ、老化防止対策にもなりそうなので、当方

も勉強しようと思っています。ありがとうございました。

 また、情報提供にご理解を示してくださいました社長様にもお礼申し上げます。 

 

 なお、キリバス国の女性代表の方の件、ご希望がありましたらDynaまでメールください。検討します。

                                                     By Dyna   メール

 


 

 

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