NO322
(2017.04.09) By
Yankさん
不良コンデンサーはこんなところにも!
高機能オーブン電子レンジを復活させる
ども、Dynaです。
怒涛の年度末と定年後の移行期を終えて、何とか新年度の体制がスタートしました。まだまだ、安定していませんが、
定年前と同じ仕事を再開しました。(まだ、ちょっと疲れていますが・・・。)
さて、レポートどころか、週末の秋葉巡回もままならない状態のためか、いつも有用な情報を送ってくださるYankさん
が、面白いレポートを送ってくださいました。ありがとうございます。
何が、面白いかというと、今回はPCの話ではないのですね。最近は、PCネタに新しさが少なくなった代わりに、他の
家電とか車などの発展的なネタが含まれているからです。どうやら、これらの世界にも、PC修理の原理がまったく同じよ
うに活用できる可能性があることも分かりました。
何か、新しい世界が開けそうでワクワクしますね。それでは、早速拝見しましょう。
Dynaまでメール
高機能オーブン電子レンジを復活させる
1,今回は家電
PC関連ではありませんが、最近、下の写真のオーブン電子レンジを復活させる機会がありました。PCとは関係ないと
思いきや、大いに関係していたという事情もあってのことです。
これは私が時々訪れる車屋さんにあるものですが、ここの若い女性事務員さんから、
「社長さん、電子レンジの不調を早く何とかして下さい。冷たいランチを食べるのはもうご勘弁を。」
と悲痛な声の出ていたのが事の始まりでした。このモデルは2枚目の写真のようにパナソニックのNE-M262(S)という
もので、中国製と銘板に記されています。その次の写真のように、いろいろな機能があり、安価で単純な電子レンジ
とは異なる高機能なものです。
2,社長さんの努力
製造から7年になる製品であり、従業員のために新調することも社長さんは考えたようですが、自分で直せるかも
という思いがあったようです。何しろ、社長さんは車の電子系にとても強い興味と学習意欲を持っていることもあって、
自から、表示されるエラーコードの"U50"を頼りに、取り扱い説明書で調べたところ、こう出ていたそうです。
●表示が消えるまでドアを開けて待つか、「取消」ボタンを押してから 手動で調理してください。
と書かれています。また社長さんがネット検索したら、 ”U50”は
「故障の場合は、庫内サーミスタまたは制御基板の不具合。」
という記述が見つかったそうで、庫内の温度を検知しているサーミスタが悪いのではないかと思ったそうです。
しかし、問題の発生するのは、寒い日のことで、暖かい日や、オーブンとして使い、庫内温度の高いときは電子レンジ
モードは正常に機能し、エラーコードも出ないことに、症状とは逆ではないかと思ったそうです。
3,社長さんから私に相談
サーミスタを社長さんは外して、単品でのチェックをし始め、熱を加えると、抵抗値が変化するものの、良否判定が
しきれずに私に相談がありました。車でもそうですが、電子系の故障で修理しきれないときは、よく私に相談があるのです。
この社長さんは、デジタルオシロスコープやデジタルマルチメーターとか、電圧が可変できる直流電源装置を揃え、
さらに基本的な電子部品も在庫しているのです。とても先進的な車屋さんですが、そうなったのは私の影響も多少は
あってのことなのだそうです。
私はこの店の単なる顧客の一人でしたが、エンジンチェックランプが点灯し、排ガス規制
に合格しない車の修理に手
こずっていた社長さんが私のアイデアどおりに修理したら完璧に直り、費用も僅かに済んだ
ことに驚かれました。
私のアイデアはオシロスコープと直流可変電源を使って、EGRバルブの働きを調べることでしたが、
車も電子系の修
理にはそういう測定器が役立つことを社長さんは強く認識したそうです。
そして、それらを買い揃えて
しまったり、電子系の勉強を従業員や同業者と一緒に始めたのです。私も講師として何
度か呼ばれたことがありました。
4,原因はサーミスタではなかった
私はサーミスタに抵抗を直列に入れたり並列にしたりして、”U50”が消えるかどうか調べましたが、変化はなく、原因
は
別にあると踏みました。抵抗値を極端に変えても、変化がないということは、CPUが正しく機能しきっていないのでは
と
思いました。また、寒いと不調というのは、一時期のPCによくあった故障モードで、電解コンデンサが低温時に内部の
活性度が悪くなり、すでに容量低下とESRの増大しつつある場合に起き易い症状に酷似しています。
基板をよく見たら、470uF/16Vの電解コンデンサの頂部が膨らんでいるではありませんか。電源回路の12Vラインの
平滑用に使われているものでしたが、Jamicon
と印刷されており、国産品ではありませんでした。某アメリカのPCメー
カーは、台湾や中国メーカーの電解コンデンサの市場での多発不良に凝りて、以降、日本メーカー品のみを使うように
なりましたが、パナソニックさんのこのレンジにはJamicon製が使われていて、膨らんでいました。測定器類を使うまで
もなく、この膨らみ具合からして、これが原因らしいと分かってしまいました。
5,即確認するために部品を探す
その電解コンデンサを交換しようとしましたが、店の在庫部品にはなく、即対処するために、車用のオーディオ機器や
電子機器に使われているもので代用してみようと私は思いました。店の裏のジャンク捨て場へ行ってみたところ、廃棄
するカーステレオと一緒にオーディオ用のノイズフィルターが捨ててあり、その中に、470uF/35Vというリップル除去用
に使われる低インピーダンス品の電解コンデンサがありました。これを使ってみましょうと社長さんに私は提案しましたが、
「カーオーディオ用の部品を電子レンジに使って大丈夫?」という顔つきでした。
でも女性事務員さんをこれ以上困らせないためには、私に任せようと思われたようでした。
車用の電解コンデンサは夏場の高温やオルタネーターのリップルに対応するために、105℃以上の低ESR品が使われ
ていることが多く、レンジにも特に問題なく使えるであろうことを私は説明しておきました。
そして、基板から膨らんだオリジナルのものを外し、付け替えたところ、結果は大成功でした。早速、社長さんが自分
用のランチで試したところ、湯気が上がり、問題なく動作するようになったことを確認してくれました。
修理後に撮った写真しかありませんが、矢印で示す電解コンデンサが、交換後のものです。実はこの修理は、2月に
行ったことで、修理時にカメラを用意していなくて、写真は全て事後に撮ったものです。Dynaさんと別件でメールのやり
とりをしていて、これを記事にすることになったからです。オリジナルのJamicon製のコンデンサはすでに捨ててしまって
おり、撮影できていませんが、膨らみ方はPCのそれと全く同じようでした。
6,その後の状況と考察
電解コンデンサを付け替えてから1ヶ月余りが経過しましたが、問題なくこのオーブン電子レンジは機能しています。
これらの写真を撮りに訪れたとき、もう冷たいランチを食べなくて済むようになった女性事務員さんからも社長さんから
も私は感謝されました。でも有り合わせの部品で、完璧に直ってしまい、以降も調子が良いと知り、私も安心しました。
今回、使った電解コンデンサは本来のものと静電容量は同じ470uFですが、耐圧が35Vと2倍余り高く、電解コンデン
サの活性度を長く維持するには、高過ぎないものを使う方が無難です。でも、この程度の高さは特に問題になりません。
そもそも、オリジナルの車用のフィルターも12Vラインに使っていたくらいです。本来なら、正規の部品で修理すべきで
しょうが、Jamicon製の電解コンデンサに私は良い思い出はなく、寧ろ、今回代用した国産のものの方が良いだろうと
思う次第です。
ここ何年か前より、かなりの日本の家電メーカーは苦しい経営となり、大きな赤字を出したり、中には経営破綻してし
まったところもあります。パナソニックも国内の工場の幾つかを閉鎖し、海外生産を増やしましたが、このオーブン電子
レンジもそういう流れの中で、中国で作ることになったのでしょう。使われている内部の部品も日本の部品メーカーでは
ないものが目に付きます。我が家にはもっと古い、Nationalブランド時代の2004年製NE-A230という日本の工場で作ら
れたオーブン電子レンジがあって、もう13年間、毎日使っていますが、故障知らずで健在です。最近、国産の家電品を
買おうとしても、容易ではなくなってきたことに、時代が変わってきてしまったと感ずる今日この頃です。
ども、Dynaです。
家電とは言え、見事な修理恐れ入りました。ただ、コンデンサーのパンクとは正直「お前もか?」的な心
境です。コンデンサー交換は、とても美味しい修理で、一時対象品を見つけたときは「ラッキー!」とばか
りに喜んだものです。しかし、その後は、アジア製のコンデンサーが良くなったのか、はたまた日本製のに特化
したのか?あまりコンデンサーがらみのジャンクは出て来なくなりました。寂しい限りです。
今般の電子レンジ修理は、事務員の方々に大変喜ばれたのは、目に見えるように分かりました。日々
の生活、特に食事がらみのものは毎日なので、不便さは深刻でしょう。当方も、毎日お弁当を買って食べ
ていますが、電子レンジがないと、冷めた状態で食べなければなりません。正直、おいしくないですよね。
がまんできないかも知れません。それを、コンデンサー交換で修理できるなんて、どこかで役にたつ可能性
がありますね。もっとも理屈の方はだめですが。
PC修理が家電や車などでも役に立つとなると、ますます家族や親族、会社の仲間にも自慢できる機会が
増えると思います。引き続き、役に立つ有用な情報がありましたら、よろしくお願いします。
Dynaまでメール
戻る