NO.378 (2023.12.28)

パソコン用ACアダプターを改造した車両用充電器の作製

                       By Yankさん

 ども、Dynaです。当方は来年4月より信州に帰り田舎暮らしを始めます。田舎での生活に欠かせないのは車で、

移動だけでなく、日々の生活用品や食料の入手に必須で、無いと本当に困ります。

 その車ですが、あまり乗らないでいると、たまにバッテリーが上がってしまいますよね。都会で暮らしていても、

仕事が忙しいと数週間車が動かず、バッテリーが上がってしまうことがたまにあります。その都度JAFに対応して

もらっていますが、急いでいる時は悲劇です・・・。

 ということで、いつも有用な情報を提供してくださるYankさんが、PC用ACアダプターを改造した車両用充電器の

作製レポートを送ってくださいました。ありがとうございます。当方も、田舎でバッテリーが上がらないよう作製する

かも知れません。 

 それでは、早速に拝見しましょう。

 

注意:パソコン用ACアダプターを改造すると感電や発火等の危険性が発生します。

    PSEも無効となると思いますので、実施される場合は自己責任でお願いします。

                                               By Dyna 



今度はACアダプターを充電器に    



Yankです。

以前、500円PCに絡んで、パソコン用ACアダプターを改造して、車の12V鉛蓄電池を元気にするデサルフェーター

なるものをここに紹介させてもらいました。 https://akipara2.sakura.ne.jp/new_page_890.htm


今回はパソコン用ACアダプターを充電器に改造することをやってみました。単なる充電器ではなく、車を長く使わ

ないときは、繋ぎっぱなしにして、常時充電を可能にし、もし、バッテリー上がりを起こしたような車の場合は、急速

充電の用途に使えるものです。



1,これを使って

この写真は改造に使ったSONY PCGA-AC19V7 というACアダプターです。各コーナーはネジ止めされており、これ

らを外すだけで 中の基板をアクセスできるもので、殻割りすることなく、検討に入れました。


写真1


2,改造することにした訳

改造の詳細は下の方にまとめますが、改造をすることにした経緯を説明させてもらうと、3年前の冬に、バッテリー

上がりで近所の ご老人が困り、ディーラーに相談されたら、要バッテリー交換で、消費税込3万円と提示され、「年

金暮らしでは、とても買えないよ。」  とこぼされていました。それで私がサルフェーション除去の実験に使ったバッ

テリーの一つを差し上げ、その後、車は調子良く走っていたのですが、先日、「あれから3年になるが、今冬を乗り切れる

だろうか?」と話されました。私がCCAと内部抵抗を測ったら、360A/6.8mΩとまだ当面は大丈夫そうでした。

でも、その数字の意味するところを理解しきれないご老人は不安そうでした。それに、只で貰ったバッテリーが、長

く使えるとは 思っておられないような様子でした。その不安顔を無くしてもらうことを私は考えたのでした。



3, MXS7.0JPという装置

そんな折、私のみんカラの知り合いから、CTEK シーテック MXS7.0JP (バッテリーチャージャー メンテナー 7.0A)

というものを ”これからの冬眠の季節に備えて、バッテリー上がり防止の為に購入しました。”

”充電後も常時接続でバッテリーの状態を監視し補充電を行う様です。”

という記述のある投稿がありました。このようなものをそのご老人も買われると良いのですが、これは、4万円近い

もので、年金生活の方に買ったら良いと私はとても言えませんでした。尚、この製品はいろいろなルートから買えるようですが、

ここに出ているものでした。

https://store.shopping.yahoo.co.jp/car-parts-shop-mm/n33871.html?sc_i=shp_pc_search_itemlist_shsrg_img#


写真を引用させてもらうと、これです。


写真2

この会社のホームページ http://www.kk-tcl.co.jp/ctek/product/product_xs70jp/   には、こう説明されています。

・特許取得の7ステップ充電で簡単にバッテリーをフルオート充電します。
・バッテリーを車載のまま充電できます。
・あらゆる12V鉛蓄バッテリーに対応します。
・ショートやスパーク発生を防ぐ安心設計。
・LEDインジケータで充電量と動作状況がわかります。
・アイレットとクリップの2種類の方法で接続可能です。
・保護等級IP65。水しぶきや粉塵にも耐えられます。

これらの全てはカバーできないものの、常時充電と急速充電のどちらでもOKなものにACアダプターを改造できれ

ばと私は思った次第です。



4,改造作業

結論を書くと、廃棄予定だったACアダプター、68KΩ、39KΩ、スイッチ、線材少々、ミノムシクリップ赤と黒と私の工

数だけで何と かなりました。

そのご高齢の方は、車に頻繁には乗っておられず、奥様の買い物に時に付き合うとか、通院に使われる程度な

のだそうですが、 いざ乗ろうとしたら、エンジンの始動に失敗したというのが3年前のできごとでした。

ジャンク箱に残っていたACアダプターの内部を私は調べ始めたのですが、自身の加齢による衰えもあって、回路

の解析とアイデアの検証にトータルで3時間程を費やし、さらにドリルやハンダごて等を使っての作業が必要でした。電圧検出

をどのようにや っているかを探り当てながら該当する部品を見つけ出し、具体的にどう改造するか工夫するのは手間のかかる

ことですが、私は 嫌いではありません。でも、空腹感を強く感じました。私の老眼とボケ始めた脳を使っての作業でしたから、ど

ちらも駆使しない といけませんでした。昔からそうなのですが、私は考え事をしていると、空腹感を感じ、甘いコーヒーを飲みたく

なる癖があるの ですが、今回は3杯も飲んでしまいました。でも少しは頭の体操になり、ボケ防止に役立ったのかもと思う次第で

す。ネットで調べてみると、

「対局中のプロのチェスプレーヤーは脳をフル回転させているため、ずっと座っているにもかかわらず1日に消費

するカロリーは 6000カロリーに達する」 という記述があったりで、それに私は勝手に納得していたりです。

http://j.people.com.cn/n3/2019/1205/c94475-9638406.html




結果は成功でした。しかも新たな出費は後述するようにゼロで済みました。このACアダプターはソニーのVAIOノ

ートパソコン用のもので、Pentium4 Prescott時代の消費電力がべらぼうに多かった時代のものです。定格は19.5V 6.15Aと最

近のものに比べ 電流容量が随分とあり、これだけ電流が取り出せるなら、シーテック MXS7.0JP の7Aには及びませんが車のバ

ッテリーを充電 するのに利用しない手はないと思いました。改造をしたことで、12.95Vと14.50Vのどちらかをスイッチで切り替えて

出力できるよう になりました。12.95Vは常時接続用で、14.50Vは急速充電用です。急速充電と言っても、6.15A Maxなので、普通

車用の空にな ったバッテリーの完全充電には半日近くを要します。でも、20分の充電で、セルモーターがちゃんと回り、始動でき

ることをシエ ンタで確認済です。



5,改造には、

1,電圧検出回路を見つけ出す。→ 一般にはこの回路構成の箇所ですが、出力電圧の回路から辿って行けば、

分圧抵抗は見つけられるかと拡大鏡とテスターを使って探しました。R1は大きい抵抗値のものと小さい抵抗値のものの2つが

直列になって いましたが、抵抗値の大きい方に並列抵抗を付けることにしました。尚、小さい抵抗値の方は、出力電圧を正確に

19.5Vにするための微調整用だと考えられます。



写真3


2,出力電圧の分圧抵抗を見つけ出す。→ この写真のリード線を付けたのがR1に相当するチップ抵抗の抵抗値

の大きい方でした。


写真4

3,Ref電圧を調べ、分圧比から必要とする抵抗値を計算して決めれば抵抗値を計算で出せて、カットトライで最

適抵抗値を探 らなくても済む。

これらの3つで済みそうに思ったのですが、3つ目の項目のRef電圧がどこで作られているか見つけられず、分圧

抵抗のホット側(添付回路図ではR1)を小さくするか、コールド側(添付回路図ではR2)の抵抗を大きくしてみるというカットアン

ドトライで対処しま した。この方法はエラーアンプにフィードバックされて来る電圧が高いと判断させて、電圧を下げる方向に制

御させるというやり 方です。つまり、19.5Vではなく、14.5Vまたは12.95Vになるようにするのです。表面実装されているチップ抵抗

を外して付け替え ることは手間がかかるので避けたく、R1側であれば、並列に抵抗を付け、抵抗値を下げるだけで良く、実装さ

れている抵抗の 両端にリード線を付け、スイッチまで引き出して、スイッチ周りに抵抗を2種類付けて、切り替えることで2つの電

圧を得られるよ うにしました。試しに150KΩを付けてみたら、約16Vが得られたので、手持ちのE24系列の抵抗から選んであれこ

れやってみま した。

R1に68KΩを並列に抱かせたら、12.95Vが得られ、14.50Vを得るには、68KΩと直列に39KΩを付けることで可能と

なりました。

この回路図のように、赤で示す部分が改造のために追加した回路です。


写真5

現実のこの回路部分は、下の写真のように、スイッチで39KΩをショートしたりオープンできるようにし、スイッチに

つながる線材に68KΩを直列に入れ、絶縁のために、熱収縮チューブを被せています。


写真6

スイッチはネジで固定するタイプが手持ちにはなく、写真のものはホットメルト(グルーガン)で固定することが必要

でしたが、買いに行かずに済んだので、ジャンク箱の整理も兼ねて、新たな出費はゼロで済みました。もし、これら部品を新た

に買ったとし ても、リード線少々、スイッチ、抵抗2本、ミノムシクリップ赤と黒で、コーヒー一杯程度のお金で十分でしょう。尚、ス

イッチを付け る場所を確保するために、その場所の近辺にあった1000uFと470uFの電解コンデンサはもう一つの理由もあって、

除去してし まいました。もう一つとは、敢えて、リップル分を増やして、残留パルスによるデサルフェート効果を狙ったのです。ス

イッチの左 上の緑色した1000uFは残してあり、充電終期の電流が少ないときは、殆ど直流になるので、これで良しとしました。

デサルフェ ートの能力がどの程度なのかは、まだデータ取りができておらず未明ですが、デサルフェート専用に改造したACアダ

プターはす でに持っており、必要ならそれを使うまでということで、深追いはしていません。



6,バッテリー60B19Lに付けて放置してみたら

これだけのことで、次の写真のように2種類の電圧が得られました。

常時充電モード用の12.95Vモード


写真7

 

急速充電用の14.50V用モード


写真8



7,約4万円 vs 0円 ながら


この改造したものは、MXS7.0JP程の機能は無いものの、バッテリー上がりを心配しないで済み、もし、上がっても、

20分程度の充電で、始動可能になるので、費用対効果は良いかと自画自賛しています。厳密には、系のボーデプロットを確

認するべきです が、位相補償系をいじることはせず、また自宅にそれ用の測定器を持たず、発振余裕度は調べていません。

安定化電源は、 安定動作をさせるため、系の位相とゲインを測って、十分に発振余裕度のあることを確認し、不十分な場合は

位相補償をする のですが、それなりの測定器がないとできません。今回いじったのは、フィードバック抵抗の入力段だけなので、

位相回転量が 大きくは変わらないと思ってそこまではやっていません。余裕度を簡易的に調べるために、完全に上がった大小

のバッテリーや 満充電に近いバッテリーにも使ってみましたが、オシロスコープでもスペアナでも発振の兆候は無く、これで良し

としました。尚、 ボーデプロットについては、ここに詳しく説明されています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%89%E7%B7%9A%E5%9B%B3


ノートPC用ACアダプターはバッテリーのサルフェーション除去装置(デサルフェーター)に以前から私は活用して

いましたが、FET整流の大電流のものは、デサルフェーターに改造するのが容易ではなく、ジャンク箱に残したままでしたが、

昨年秋には、改造せず、冒頭に紹介した500円ノートPCにそのまま活用したのが一つありました。

今回はジャンク箱にまだ残っていたACアダプターの改造で、断捨離にもなりました。またご老人の不安そうな顔を

和らげることもできました。


8,早速の活躍


先日、この充電器を急遽使うことになりました。近所の主婦の方が、買い物に行こうとしたら、エンジン始動に失敗

し、私に相談がありました。私は早速、ご老人のところに行き、充電器を一時的に戻してもらって、その主婦の方のダイハツ・

ムーヴに急速 充電用の14.5Vモードでつなぎ、5分待って、始動を試みました。セルモーターは何とか回ったものの、始動しきれ

ずでした。まだ 充電が足りないと判断し、今度は10分待って、やってみたら、問題なく始動できました。ご老人とは別のところでこ

の充電器がま ず役立ちました。みんカラの投稿に刺激されて、急遽、こしらえた充電器がこういう形で第一回目の救済に役立ち、

主婦の方か らとても感謝されました。この事実をご老人にも伝えましたが、「それは良かった、安心だね。ありがとう。」の言葉が

帰ってきま した。それを聞いて私もちょっと嬉しくなりました。元と言えば、みんカラに投稿された方が約4万円も払って入手され

たと知り、ジャンカーとして、ジャンクの活用を思い付いたのが良い結果になったのでした。これだからジャンカーは

辞められませんね。



注意:パソコン用ACアダプターを改造すると感電や発火等の危険性が発生します。

    PSEも無効となると思いますので、実施される場合は自己責任でお願いします。



                                        



ども、Dynaです。

 レポートありがとうございました。

 何度も読むと、数年先の当方夫婦の姿が見えてきました。確かに、冬場は車を出さない可能性はありますね。

 田舎の冬の寒さは尋常ではないので、当面冬場は横浜に戻って越冬する予定ですが、いつかは冬も生活しな

いといけません。すると、バッテリー上りの可能性は出てきますね。そして、いざ車を出そうとしてら「動かない!」

が予想されます・・・・。

 ということで、確か当方のジャンク箱の中にSONYの19.5Vアダプターがあったはずと思い探しました。同程度のもの

はあったのですが、どうにも配線方法が何とも分かりません。 頑張って研究してみます。


 

  
                                                            Dynaまでメール 

 

 

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