小ネタJ 放射線量計(ガイガーカウンター)関連  

          By 鉛の錬金術師 さん (H24.08.28)

 

  放射線を正しく測定することとは


どもDynaです。 

 間もなく夏休みも終わりですね。と言っても当方のような日本のサラリーマンには、欧米のような夏休みはあり

ませんが・・・・。

 さて、昨年発生した東日本大震災に伴う、福島第一原子力発電所の事故により、悲しい事態が発生してしまい

ました。特に放射能汚染は広範囲に広がってしまい、いまだに帰宅出来ない方々が沢山います。本当に悲しい事

態だと思います。

 これに関連して、当方のHPにも 小ネタJ 放射線量計(ガイガーカウンター)関連 を設けました。しかし、この

放射線測定というのは、大変難しいもので、短絡的に市販の機器を購入して測れば良いものでは、ないようです。

そのことは色々な方面より聞き入れていたのですが、「ならどうしたら良いのか」が分からず、そのままにしていた

のが実態です。

 事故が発生して1年半も経ちましたが、ここに来て、専門家の方から丁寧な説明をいただきました。何通もいた

だいたのですが、どうしても理解できず、なんとか素人でも分るように書き直していただきましたので、ここの公開

させていただきます。ありがとうございます。

 テーマは、以下のとおりにしていただきました。

  @、放射線を正確に測定する方法とは

  A、家庭用に市販されている機器の精度は

  B、@とAを踏まえた結論 

 なお、放射線の測定を正しく行うことは、本当に難しいということが結論のところを、強引に書いていただいたの

で、かなり無理があるかも知れません。その点、ご理解ください。 

         By Dyna   メール  


@、放射線を正確に測定する方法とは

まず、さんざん話題になった放射線被曝に関する単位「Sv(シーベルト)」ですが

これは、放射線が人体に与える影響を考慮した単位です

通常は「毎時(/h)」という「線量率」で示します

正確には「線量当量(率)」と読んで、放射線の種類によって効果が変わることを考慮した比較的新しい単位です



致死線量は全身被爆で「7Sv(積算線量当量)」と言われています

例えば、福島原発の「原子炉格納容器内」では、僅か1時間以内でこの数値を超えてしまいます

逆に言えば「短時間ならば作業が出来る」ということで、建屋の修復などにおいては

常に個人のモニタリングを行って、限度となる線量に達した場合に作業を撤収することとなります。

過去の広島や長崎、核実験や被災による研究で、ICRP(国際放射線防護委員会)という機関からは

「100mSv以下では有意な障害が見つからない」との見解を示しているために

今回の福島原発でも、その数値は基準となっています


諸説はありますが、厳しく見積もって日本の労働基準法などで「年間50mSv以下」に制限されています

福島原発事故を収束させるために、より大きな数値(当初は250mSv)を用いています

今現在(2012年8月末)、今回の原発事故による放射線障害での死者は一人も出ていません

(公表されているレベルですが)。

 

そういった事を踏まえて、測定を行うことになりますが

通常は「μSv/h」という、1Svの「100万分の一以下」の単位を測定することになります

計測器の感度が高く、表示が「0.01μsV/h」レベルまで測定可能ですが

廉価な測定器による厳密な測定とその結果に対する「信頼性は皆無」と言って良いかもしれないので

そういったレベルの数値や推移は、あくまでも「参考程度」に考えるべきでしょう



まず、測定対象とするのは「空間線量」となります

これは、基準としては様々ですが、一般的には地上などの対象から「1m」の高さで測定することです

「距離」が違うと、光と同じで距離が離れると放射線量も低くなりますから

「高さを一定」にすることは最低限の行うべき必要なことと考えます
 


また「線量率」など、時間単位で測定する場合

低い線量を測定する場合には、測定機器の内部的な仕様として「時定数」があります

普通の電圧測定するテスターなどと同様に、「数値」を示す、「安定するまで一定の時間」がかかります

アナログでも、デジタルでも、「1時間あたり」の線量率という数値にするために

一定の時間の測定が必要となります
 

体温計などでも、いくら測定時間が早くなっても、限界があるように

なるべく「正確な数値」を測定するならば、放射線計測器を「一定時間は測定する」必要性が有ります

三脚などを用いて、「高さ」と「時間」を一定にすべきでしょう


数値については、自然界の放射線(バックグラウンド)をも一緒に測定してしまいます

「バックグラウンド」と見分けが付かない場合がありますので、数回程度を測定して「平均値」とすべきでしょう



また、測定された数値次第ですが、比較的高い線量が計測されてしまった場合には

より「高いレンジ」で再度測定する必要があります

危険なほど高線量な状況は、関東近辺では無いと思われますが

福島に近くなるほど、また地形的な問題により気象と共に放射性物質が「濃縮」されています

いわゆる「ホットスポット」と呼ばれる部分を測定する場合には、それなりの数値に適した測定レンジを用いるべきでしょう

明らかに問題となりそうな数値が測定されてしまった場合には、保健所などへ届け出る必要もあります



現状、公開されている空間線量では、殆ど問題になるレベルの測定値は出ていませんが

原発に近い、管理されている区域などのレベルの場合は、また別の話となります。

一般的に市販されている放射線測定器では不相応な場合があることを留意願いたく思います。


 


A、家庭用に市販されている機器の精度は

これはかなり難しい話になりますが

安ければ良いとか、高ければ良いとも言い難いです



本格的な日本製で、きちんと正確な数値が測定できるレベルは、やはり30万円ほどからの価格帯となります。

良く聞く「ガイガーカウンター(計測器)」、「シンチレーション計測器」、「電離箱計測器」

また、現在において市販品でも主流になりつつある「半導体計測器」ですが

製造メーカー次第ですので、なるべく「日本製の製品」を購入することをお勧めします。
 


一部不穏当な業者によって、40年以上も前の大きく単位も違う「米軍の測定器」が販売されています

先の「電離箱」という測定器ですが、これらは論じるまでもなく使い物になりません


また、小さいことは良い事のようですが、「小さい=感度が低い」ということになります

原発などの作業場では「ポケット線量計」などが使われていますが

「目的」が違うために、空間線量を測定するには適していません



ワタシが最も適当かと思われる製品としては

日本の「エステー」が製造&販売している「エアカウンター」あたりがコストパフォーマンスも含めてベターかと思います

http://www.st-c.co.jp/air-counter/


初代と2代目の「S」は半導体検出器が用いられており、小型ですが測定値のばらつきなど精度管理を考慮すると

「最も廉価かつ適切な商品」と思われます

今月(2012年8月)からネット販売されている「シンチレーター」を用いた「エアカウンターEX」がベストではないでしょうか?
 


半導体検出器は、フォトダイオードという「小型な半導体素子」を流用しているために

エネルギー依存性、線量依存性、方向依存性など、特性が測定方法によりばらつきます

新しく開発&販売された「シンチレーション計測器」である「EX」は、それらが解消されていると思われます。



ガイガーカウンターは廉価な製品に多いのですが「線量率」を測定するには不向きと言わざるを得ません

福島ではガイガー計数管を輸入して、独自で開発&販売されている地元の方がいらっしゃいますが

ガイガー計数管(東欧製)の精度管理が出来ていないために、苦労をしていると聞き及びます

高級万年筆程度の太さの計数管でしたので、感度は比較的良いと思いますが・・
 


ガイガー計数管としては、小さなモノは釣りに用いられる電気浮きの「棒状リチウム電池並」の細さや大きさから

「コップ程度」の大きさまで様々です

構造的に、弱い放射線を測定するために、「窓」に「薄い雲母」が使われている高価な製品もあります



計数管内部に入った放射線により、内部のガスが電離して

印可してある高電圧で一時的に小さな「雷」を起こす放電現象をカウントしています

一般家庭では何かと不向きと思われますので、ガイガーカウンターは正確な測定に向かないと思って良いでしょう



シンチレーション計測器ですが

「シンチレーター」と呼ばれる「ヨウ化ナトリウム」や

前述の「エアカウンターEX」では「ヨウ化セシウム」が結晶として使われています

γ線とシンチレーターが相互作用して発光し、その光を検出する方式です



大型の装置としては、医療施設で用いられる直径1m程もある測定器で検査が行われています

塩と同じく、「結晶」であるために大型結晶は「割れる」恐れが有りますが

小型であるので、概ね「問題は無い」と考えます。

感度が高いために、汚染源を「見つける」ことは最も優れていますが

正確な数値であるかは、しっかり製造時の「精度管理」でしょう。



半導体検出器は、入射したγ線を直接計測することが出来るセンサーですが

まず、専用のモノでない限り小型ですから、感度は低く誤差なども大きい場合があります

フォトダイオードを多数内蔵して対応している製品もありますが

専用でないかぎり、あくまでも精度管理上の問題は起きており

正確な測定は難しいと思われます



今回のような「低線量」な測定場においては不向きですが

最も精度が高く、前述のエネルギー依存性などを考慮しても適しているのが「電離箱測定器」でしょう

「空気」を放射線が電離することで、その電離した「イオン」を検出&増幅して測定を行います

問題は、感度が低いために原発などの高線量な現場での測定には適してしますが

低線量場の測定には不向きであることと、まず「高価」ですから除外対象と思います。
 

 



B、@とAを踏まえた結論としては


「正確に測定できる製品を購入すること」

 基本的に、国産メーカーの製品を購入すべきです

 アマゾンなどのレビューを参考にすると良いでしょう



「正確に測定するための、一定の環境(高さや測定時間)を作ること」

 放射性物質や放射線は一定ではないために、まずは測定する環境を整えましょう



「一般的な測定器の”測定値”はあくまでも、参考程度にすること」

 残念ながら、廉価な製品での測定値は信用できる数値ではないことが多い

 測定された数値は人体への障害が見つかる最低限の線量より「遙かに低い数値」であること

 自然界からも、環境放射線として「常に被爆している」ことを前提にしましょう




「測定値は継続して計測を行うことで、汚染された場所や空間線量の”推移”を検討するために用いること」

 測定する場所での推移を観察して異常が無いことを「把握」すべきと考えます

 1カ所を1回だけ測定して、それを「結果」とすべきではないでしょう



「もし、高線量が測定されてしまった場合には、公的機関などでの再測定を行う」

 概ね、関東圏で問題になる数値まで濃縮されたりすることは無いと思われます

 むしろ「過去の放射性物質(ラジウム線源など)」が見つかってしまうくらいです


それと、放射線測定を行うためには「放射能」や「放射性物質」、「放射線」の「用語」を学ぶべきと思います

日本国内では「放射能」が一般的に用いられてしまう状況になっていますが



「放射能」とは、放射性物質が「1秒あたり何個壊れるか」を示す用語です

英語では「Radioactivity」と呼びます
 


「原子核が放射線を発する能力」であるために

本来「放射能が漏れた」という文言は不適切な用い方です

一般的には「放射性物質が漏れて、放射線が検出されてしまった」と読み替えるべきと考えます
 



総括として

まずは購入対象の放射線測定器がどのような製品であるかを見極めるべきでしょう

売れている製品が全て良いとは限りません

機器により「特性」が違います、同じ結果を求めるならば少なくとも同じ方法を使った機器を購入すべきです

測定は厳密に行うというよりも、再現性を必要とします


先の通り、1カ所を1回だけという測定ではなく、何度か測定しなおしてみる必要が有ります

測定された数値を、具体的にはどのような「意味」があるかを理解しましょう

測定そのものは難しくはありません、「原理」を知れば簡単なことです

放射線は「距離」をとれば低減可能です、遮蔽が必要ならば措置は不可避ですが

関東圏での汚染と被爆に関しては客観的な測定値を見る限り「低い」と言えます

風評被害のごとく「不理解」から来る不適切な対応を控えましょう

まずは「知る」ことが肝要と思われます

 

 

           By 鉛の錬金術師  「第一種作業環境測定士(放射性物質)」
 


 ども、Dynaです。

 何度も読み返すと、何となく分って来た気がします。重要と思えるところは赤くさせていただきました

 まずは知ることなので、公的機関のHPを見てみました。多くの市町村では、沢山の測点を決めて、定期的に測

していました。それを見る限り、騒ぐ必要はないと思えますね。東京や横浜の話ですが・・・。

 秋葉原での測定器価格は下がっており、一時と比べると扱っているお店も少なくなっています。国産メーカーか

お安い測定機器も販売されたためか、放射線に関する話題もかなり下がっていると感じます。

 あってはならない事故とはいえ、発生してしまったのだから、謙虚に受け止め、その成果を人類のこれからに

繁栄させないといけませんね。折角ですから、放射線について、もう少し勉強します。ありがとうございました。

 
        By Dyna  メール  

注) なお、放射線の測定を正しく行うことは、本当に難しいということが結論のところを、強引に書いていただい

  たので、かなり無理があるかも知れません。その点、ご理解ください。 ←再度、ヨロシク!!

 

 

 

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