PCスピーカーセットの音質を探る
U
(調整編)
By
mi さん (H20.07.12)
ども、Dynaです。
前回、SP音質の解析方法をレポートしていただきましたが、グラフで見られると本当に良くわかりますね。
理屈とか、感覚ではなくて、客観的なデータとして見られるからです。正直ここまで出来るものとは思いませんでした。
次回もあるとのことでしたので、大変楽しみにしておりましたら、早々に送っていただけました。ありがとうございます。
今度は、実際のSPBOXをターゲットにして、どのようにしたら音質が良くなるのかを探っています。すごいですね。
では、早速、拝見しましょう。
PCスピーカーセットの音質を探る U (調整編) by mi
前回の測定結果を元にいろいろ試みた結果、思った程には改善出来ない所も多くあり、
限界も明らかになって来ましたが、実際の使用では意外に効果的に作用した調整もあります。
今回はあまり根本的な改造はしないで、手持ちの部品の範囲で行う方針で進まざるを
えない所もあり、限られた条件でいかに効果を出すかと云う面白味がありました。
1. まず、改善する点を四つに絞って見ました。
A.
低音の再生能力を上げる。
B. アンプの発振を防ぐ。
C. 高音に偏った再生特性を押さえる。
D. 音量増大時のビリツキを取る。
2. 次に分解して、製品の内容を探って見ました。
前面のビス五本を外し内部を見ます。
◎ スピーカーは5cm口径、8Ω、最大入力1.5Wです。コーンの周りのエッジはポリウレ
タンのプレス成形で、前後の動きは思ったより良好でした。コーンは紙製、センター
キャップも紙ですが、とても柔らかいモノです。こんな柔らかいのは始めて見ました。
ハンダを外してfoをおおよそ計ってみました(と言っても、無誘導抵抗もバルボルも
無いので、テスターで各々電圧値を出し算出するので正確なインピーダンスは出ませ
んが、何Hz位程度かおおよそ判かります)。結果はfoは200Hz前後の様です。上の方は
10kHzで30Ω前後で、これも正確ではありません。
◎ 箱はプラ製、一応バスレフ型の様です。中央の穴を指で塞いで100Hzを入力すると、
レスポンスが落ちるので、それなりに機能している様です。音を入れるとかなり
激しく側面が振動しています。
◎ 電源アダプターはACトランスのみ、整流は一方のSPBox内の基板上でブリッジDと
1000μFの電解Cによる簡単なものです。
◎ 増幅はLA4192と云うサンヨーのICでした。おそらくラジカセ用と思われます。
電源電圧は9V 4Ωのスピーカーで出力2.3W 2チャンネルの構成です。運良くこの
ICのデーターシートを見つけ出しましたので、推奨回路と特性グラフを御覧下さい。
画像 「LA4192 2ch」
画像 「LA4192 周波数特性、歪特性」
実際の回路も推奨回路を元としています。異なる点は、入力に高周波ノイズカット用
のC、ゲインを下げるための抵抗、直流分が入ってしまった時にカットする電解C、
二連のヴォリューム、ローカット・フィルターが付いていました。また推奨回路図の
C1(C2)は100μFでしたが、実際の基板では47μFが使われていました。
(このCに付いては、次で記載します)
3. 実際に四つの改善点の対策に付いてお話します。
◎ A.の低音増強については、推奨回路図のC1の容量増大が決定的に効きました。
47μFを200μFと470μFに変更しました (Cの手持ちが無く別々に成っていますが
470μFで良いでしょう。実際は左右の差は感じませんでした)。
これはデーターシートの周波数特性の左のグラフを参照して下さい。
もう一つは入力側のローパスフィルターをパスしました。これはあまり効果が無い
様に見えます。これらの結果を測定したグラフはこれです。
画像 「低音域の特性比較」
画像 「ローパスフィルターをパス」
見た感じでは、少ない効果に見えますが、聴感上はかなりの効果があります。
このCと27ΩのRは負帰還の量と負帰還による低域周波数の改善に関係しており、
Cの容量を多くすると低域の負帰還量が増え、クリッピング・ポイントの向上と
歪の改善が見込めます (このICはゲインが50dBと高いアンプである様で、このRで
ゲインも調整しています。他のこの手のICにも良く用いられる手法です)。
また、音量を上げると音が破れる事がかなり改善された事は驚きで、BOXの作りが
良くないと思っていたのは間違いでした。
◎ B.のアンプの発振はスピーカーの高域のインピーダンスが高く、出力がオープンに
近くなる事により、負帰還が不安定になっていると推測します。
スピーカーの端子と並列に、CとRを直列にした回路を入れて、インピーダンスを
下げます(ゾベル・ネットワークと言います)。これは高域の再生周波数も少し
低下する事になります。手持ち部品の関係で、無極性のC 2μF 50V と1W 13.2Ω
のR (33Ωと22Ωのパラレル)を付けています。勿論、Rは10Ωでも構いません。Cは
フィルムCなどで良いでしょう。この数値を変えていろいろ測定をしてみたかったの
ですが、部品の手持ちがなく確認していません。
これらにより発振は止まりました。
◎ C.の高音域の張り出しを押さえる事は残念ながらあまり出来ませんでした。
まずは吸音材による方法を試みて見ました。Box内部に厚目の布を両面テープを使い
上下左右に貼り付けています。これでは周波数のあばれを取るには不足の様で、
さらにロックウールを150cc程上面に入れてみました。
これは、低音の増加の効果もあります。データーからは、あばれ自体は少なくなって
いるのが分かります。
超高域のあばれを押さえるため、コーン紙のセンター・キャップにラック・ニスを
一回塗ってみました。硬化による強度の上昇を期待してですが、上手く行っているか
判りません。データー的には幅が狭くなっている様にも見えますが・・・。
聴感的には落ち着いた音になっています。ただ、高音が優位な音である事は否めま
せん。 この事の測定データーはこれです。
画像 「吸音材の効果」
キャップのニスの具合の写真はこれです。
画像 「センターキャップにラックニス一回塗装」
◎ D.のビリツキはBoxの左右に細木の柱を渡し接着し改善しています。効果はかなりの
もの様で音がクリアーに聴こえます。
ビスも一回り太めのビスにして締め付けをしっかりしました。
前面のグリルの補強リブも一部カットしています。 柱の具合は写真を御覧下さい。
画像 「柱補強の実際」
柱補強の効果の測定データーはこれです。
画像 「柱補強の効果」
高い方のあばれが少し出ているのは柱の反射の影響でしょうか、吸音材を工夫すればと
思いますが、聴感上は悪い様ではないので一応ここまでとしました。
現段階では、かなり良質の再生音となっており、PCでの使用には十分と思われます。
ただ、出力1Wそこそこで、スピーカーのインピーダンスが8Ωなので大きな音は高い方から
サチッテ来ます。せめて4Ωを使ってくれたらと残念な思いがします。とは言え小さくとも
隣室から苦情が出る程度の音量は出せます。
(各データーのグラフ表示で高音域側の山や谷があまり揃っていない所があります。これ
は、どうも内部への工作をする毎にバッフル板をビス止めする具合が毎回異なった力で
締め付けているための様に思われます。開閉が多いので、プラの箱ではその都度つよく
ビスを締め付けると、数回でビスが効かなくなってしまいます)
4. テスト・ソース。これらのモノを使ってみました。
◎ 人の声としては、
http://jp.youtube.com/watch?v=VCIyzNISw1Q&feature=related
音量を上げるとテナーのffが、どうしてもサチッテ来ました。
◎ 音域のバランスを見るには、
http://jp.youtube.com/watch?v=ifKKlhYF53w&feature=related
ピアノの打鍵が均等に出ているでしょうか。
◎ 最終テストには
http://www.j-jazz.net/
MUSIC の So What Hi-Fi(64kbps)
ベースの動きが出ているでしょうか(重低音は無理ですが)。
Boxの上に1Kgの鉛の塊を乗せると、さらに音質の改善が認められますので、本気で木の
箱を作ればさらに良い音が望めそうです。
とは言え、かなり使えそうなスピーカーに変身させる事が出来ました。
また、音楽を楽しむ時間が増えそうです。
by mi
→ 2作目のレポートありがとうございました。期待通りの結果で、思わず納得してしまいました。ありがとうございます。
当方もコンデンサーを替えると特性が変わることは知っていましたが、グラフを見ながらの変更なら、結果を確認
出来るので分かり易いですね。以前、自作をよくしていた頃、替えては自分の耳で聞きながら選んでいましたが、
正直良く分かりませんでした。これなら一目瞭然ですばらしいです。
それから、吸音材等を入れたあとの変化も良く分かりますね。SPBOXには当たり前のように入れますが、ここまで
差がつけば、逆に嬉しいですね。今回はあのSPBOXがかなり良くなったのは、レポート上は分かりました。ただ実際
聞けないのが残念です。当方の子供の所にある同じSPを瞬間に切り替えれば、どれだけの差になったかが分かる
かも知れないですね。まあ、グラフが真実を物語っているのですから、やる必要はないと思いますが・・・。
今般は、本当に貴重なレポートありがとうございました。
By Dyna