By
Yankさん
5-15V
40Aという大電流電源の修理依頼 By
Yank
この電源は私の属する愛北アマチュア無線クラブJA2YAKにて使っている200W無線機用のダイアモンド社製のものである。しかし、これが壊れてしまい、
無線機が使えなくなってしまった。尚、JA2YAKのHPへのリンクを秋葉原ジャンクパラダイスのTop画面右上にDynaさんの好意で入れさせてもらっている。
どんなクラブか、興味ある人は、HPを見ていただきたい。HPにあるように、近在にはない大きなアンテナタワーや設備を持ち、このクラブのある愛知県は
日本の工業生産高1位だけあってか、メンバーに各種工業の専門家が居て、中には校長先生もいるが、毎週のコーヒーミーティングはとても賑わっている。

写真1、トップカバーを外した状態
1,壊れた電源ユニットを誰が直すのか
結論を先に書くと、この修理を私がやることになってしまった。このクラブには上級の無線技術資格者やアメリカのExtra級という最上位の資格を持つメン
バーが多く、電源修理くらい朝飯前にやれる猛者が揃っていると私は思っていたが、何故か私に役が回って来てしまった。メンバーにはいろいろなプロが
揃っていて、皆さん、優秀ながら、昔、3K仕事と言われた、汚い、臭い、苦しい等のローマ字表記でKで書き始めるようなことでも苦にせずやってしまう
人が 多い。頭だけでなく、手もよく動く人ばかりだ。でも、回路図が無い機器には手を出したがらない。私は昔やっていた、リバースエンジニアリングの
癖が抜け 切らず、現物から回路図を起こすことが老人ボケ防止に良いと思っていたら、修理役を引き受けさせられてしまった。尚、Dynaさんがこのクラ
ブを昨年、訪問されたことがあった。
2,症状
故障の症状は、スイッチを入れても、OVER LOADの赤いLEDが点灯し、直流が出力されないというものであった。尚、この電源はスイッチング方式の電源
だけあって、パワーの割にとても軽く、片手で手軽に持てるものである。
リアパネルのラベルには、Model GZV4000 5V-15V 40Aとあり、中国製であることが分かるP.R.C は、People's Republic of
China の略で北京政府の中華
人民共和国のことである。
回路図は無く、修理をするのには、現物を解析し、回路図を起こしながら行う必要があるが、私はそれを楽しむ方である。でも、中国製は部品品質に期待
できないものが多く、あれもこれも要交換ということもあり、手間が掛かるが、それもボケ防止には良いのかも。

写真2. 背面
3, トラブルシュート
私がオシロスコープで出力電圧を観測したら、スイッチオンで、一瞬だけ直流出力が観測できたが、即、電圧は下がって行ってしまった。電圧調整ツマミを
Minの5Vに設定すると、0.5秒くらいは、5Vの出力が観測でき、最大の15Vに設定すると、即、シャットダウンした。でも、この時、デジタルオシロスコープで
観測すると、下のように、電圧は一瞬だけ10V近くまで上がることが観測され、後は下降して行った。

写真3, Start Up
4,症状から推測すると
この症状から、スイッチング機能はあるが、保護回路が働いているらしいことが推測できた。基板を調べてみると、カレントトランスと思われる黄色いテー
プでコアが巻かれた小さなトランスがあり、それは整流出力回路とスイッチング回路のFETの間に直列に入っていた。このトランスに流れるスイッチング
電流を拾い、ダンピング抵抗Rで受けて、後段に送っており、回路がどうなっているか、詳しく知りたかったが、回路図は無く、現物を見ながら、該当部分
のブロック回路を書くと、下の図のように構成されたOLP(Over Load Protection)回路があった。

写真4, OLP回路
トランスの2次側には、赤矢印で示すダンピング抵抗と思われるRが巻線と並列に入っていた。このRには、R43というレファレンス番号が振られていた。
この左側に写っているのがカレントトランスである。

写真5. R43
5、トラブルシュート2
R43の両端をオシロスコープで観測すると、リンギングがしっかりとあった。その写真を撮りぞこなって紹介できないが、EDN誌のここに紹介されているよ
うな感じであった。
https://www.edn.com/what-is-the-ringing-period-on-an-unterminated-line-rule-of-thumb-26/
このページから引用させてもらうと、本来は赤の線のような波形になるはずが、激しい減衰振動を伴った黄色のような波形で、もっと大きな振幅であった。
そして私は思った、ダンピングが不十分ではないかと。

写真6. リンギング波形
そこで私はダンピング抵抗であるR43を調べてみると、カラーコードからは100Ωであることが分かり、試しに、330Ωを並列に付けてみたら、電源は起動した。
しかし、負荷として、車のヘッドライト用H4バルブ55/60Wのフィラメントをパラにしたものを付けると、シャットダウンしてしまった。220Ωに付け替えて
みたら、シャットダウンしなかったが、電圧を最大にしたらシャットダウンした。100Ωの抵抗を基板から外して抵抗値を測ったら、何と無限大であった。これ
では過電流でもないのに、ダンピング不足で過電流と回路が判断してしまったことが類推できた。
6, 修理してみる
無限大ではダンピング抵抗としては意味をなさず、私のパーツボックスにあった100Ωに付け替えてみたら、H4バルブの55Wと60Wのフィラメントを同時点
灯させてもOKで、さらに60Wの負荷を付けてもOKだった。この時に撮った写真はこれらである。13.8V時、電流は15A程流れている。

写真7-1. 15Aの電流

写真7-2. H4バルブによるダミーロード
この15A程の負荷電流を流している状態で3時間以上放置していたら、僅かだが、異臭と異音がするようになった。基板をよく見ると、頂部が膨らんだ電解
コンデンサーと基板に電解液が漏れているものもあった。無線機で使う場合、送信と受信を交互に行うので、このダミーロードによる連続運転程は酷では
なく、以前は異臭や異音が出なかったのかも知れない。

写真8. 劣化していた部品

写真9. 交換した部品
電解コンはどれも、CapXonと印刷された中国の深圳で作られたものであった。
多くの中国製の電解コンデンサーには期待しきれないが、CapXonもその一つのようだ。この写真の中央のものは頂部が膨らんでおり、右端は液漏れし
ている。これらを国産のものに交換し、計175Wの負荷で放置してみたが、問題なく動作していた。日本製電解コンに交換したのはこの3つだけで、他は
そのままであり、恐らく時間の問題で、この先、駄目になる電解コンもあろう。その時は、私ではなく、他のクラブ員に交換してもらうことにしよう。
7, 実際に使ってみると
修理後、順調にJA2YAKにて活用できている。冬場はローバンドのDXが可能で、1.9MHzや3.5MHzで海外との交信もこの電源で多数できており、クラブ
員から私は大いに感謝された。私には仕事で電源設計をしていた時期があり、昔取った杵柄が今回も役立った。
文頭の1で、3K仕事という表現を使ったが、回路図のない機器をきちんと機能させるようにするのは、一般には、Kで形容される世界である。回路図がない
なんて、苦しい、悲しくなる、気楽にできない、気が滅入る、心が折れる、暗い気持ちになるのが普通で、これらはローマ字で書けば、全てKで始まる言葉
である。でも、これらのKを気楽に対処できると、人生は開けるものである。現役時代の私はエンジニアとして、毎日がKの世界だった。でも、何とか克服し、
今はそれらのKが役立っていると感ずる今日この頃である。
By
Yank
おわりに
レポートありがとうございました。今般の記事を読んで自分もオシロスコープを持てば、「ある程度の電源回路等の故障を特定して、修理も出来る
かも知れない。」と勝手に思ってしまった次第です。(かなり思いあがっています。)何故かというと、オシロスコープを持って修理するのが長年の夢
だったのですね。そして、今しなければ、「もう残りの年数も少ない」という現実もあるからです。
何か修理する物があるかというと、例えばHDDケースで電源部のコンデンサーがパンクをしているのを見つけ交換したのですが、何故か直らなか
った物があるのです。この位なら原因を特定出来そうな気がしているのです。しかし、今般の記事を見ていると「リバースエンジニアリング」が出
てくるのですが、過去に何回か実施して諦めた事があるのでした。最近の機器は基盤が多層構造になっているものが多いからですね。でもHDD
ケース位なら単純な基盤なので可能かもです。
今欲しいものは、オシロスコープやドローンですね。どちらもちょっとお高いので慎重に考えましょう。(その前に勉強かも)
PS:3K等のお話、大変面白かったです。でも、頑張ればその分いろいろな方から感謝(K)されるので、辛いKも払拭されるかもですね。
By Dyna メール
戻る