NO.246                                       By Yankさん (H24.05.09)

電源の入らなくなったMac G4の復活

 どもDynaです。

 「最近パソコンの電源が急に入らなくなった。」と言った症状を良く聞きます。この場合、電源部の不良が多いの

ですが、パーツとしてはコンデンサーやFETなどが壊れているようです。そのような時は、似たようなパーツを購入

して気楽に交換していました。しかし、今般Yankさんから電源部の修理レポートをいただき、拝見して、その理屈

や原理の難しさを痛感しました。

 正直消化不良状態ですが、良い勉強になると思いますので、じっくり拝見しましょう。そして勉強しましょう。 

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Mac G4を復活させる

 

1 はじめに

 印刷業を営む私の友人は、業務上、Macをどうしても使う必要があり、現在も、Macを複数台使っています。しか

し、一台のMac G4が故障し、電源が入らなくなって困っていました。彼には電子回路の心得がある程度あり、修

理しようと努力しましたが、上手く行かず、結局、私が調べたところ、電源ユニット内の力率改善回路(PFC)が機

能していませんでした。応急処置的に、代用できる部品で修理し、1ヶ月余りが経過しましたが、問題なく、その後

も機能しています。


写真1 壊れたMac G4電源ユニット



写真2 貼られていたラベル

 


2 代用品で動作させてみる
 

(1)故障の原因追求

 結論を先に書くと、故障はPFC(Power Factor Control)回路=力率改善回路のFETが壊れ電源ヒューズが

切れていました。これら以外に、Rec. Outのブロック電解コンデンサの容量が低下しており、これも交換しておき

ました。元の部品のFETは入手難で、即買えるもので代用しましたが、回路を一部変えることで、波形的にも、熱

的にも問題はなく、多分、この代用FETのままでも、何とかなりそうに私は思います。


 尚、この件は、昔、私がアメリカに赴任していた頃のDIY仲間に向けて書いているDIYのブログに、すでに先月書

きました。彼らに分かってもらうには、私の限られた語彙でも、英語で書かざるを得ず、そうしましたが、所詮、母

国語ではないため、つたない書き方しかできていませんが、以下にあります。

http://blogs.yahoo.co.jp/mae_yas/4574531.html

 Mac G4の電源壊れは、ネット検索すると、結構、多くヒットすることから、お困りの人も多かったことが伺われま

す。Dynaさんと相談して、私がどう復活させたか、日本語で写真を増やして、この場に書かせてもらうことにしまし

た。



 すぐ下の写真は、金属ケースの中の基板のリード部品面です。この裏には、表面実装部品が写真7のように幾

つか付いています。構成は、AC入力部、PFC回路、スタンバイ電源回路、二系統のDC-DC回路になっていること

が、部品とパターンや先に示したラベルから読めました。回路図はなく、手探りでやるしかないので、パズル解き

のようなところがありますが、結構、楽しめるものです。雑念を忘れて、解析に没頭していると、お腹が空いて、メ

タボ対策になります。でも、直った後に、ビール缶で祝杯を上げてしまったので、対策効果は薄かったかも知れま

せん。汗をかいた後のビールが美味しいように、私にとって、解析できた後に飲むビールは格別です。歳で衰えた

脳細胞を無理やり活動させるので、CPUが消費電力増で発熱するように、カロリーを頭が消費することになり、そ

の補充をしてやらないといけません。しかし、酔って、その後に半田ごてを触って、火傷したこともあります。



写真3 電源ユニット中 (リード部品面) PFC用FETの場所はの下




写真4 切れていた電源1次側のヒューズ





写真5 容量低下のブロック電解コンデンサと各足間がショートしていたFET




(2)部品の入手と交換

 FETは、ST-Micro社のW20NM50でしたが、入手できず、名古屋市大須のアメ横ビル2階にある潟{ントンとい

うお店に在庫していた、2SK790という東芝のもので代用してみました。


写真6 2SK790

 2SK790の物理的なサイズは、W20NM50と殆ど同じで、耐圧も同等でしたが、他は微妙に違っており、そのまま

の置き換えのできないことは容易に想像できました。どう、使い込むかは、ちょっとしたKNOW-HOWが必要です

が、そこは、自分の興味と努力で何とかするしかないと思いつつ、買ってきました。



 FETは2つがパラレルに使われていて、W20NM50の一つは、ソース、ゲート、ドレインのいずれもが互いにショー

トしていて、抵抗値はスタテッィクな状態でどれも0.3Ωという低い値でした。もう1つは、生きていましたが、バラン

ス良く動作させるために、2つとも、2SK790に置き換えました。



写真7 外したヒートシンク 右端の2つの大きい素子が、W20NM50

 


(3)代用品でも使えるようにするには

 ゲート容量やスイッチングタイムとか、相互コンダクタンス等の違いがあるため、物理的に基板にそのままFETを

実装できても、完全な動作は期待できないので、私がやりたかったことは、以下の事項です。
 

1、 ドレイン波形を観測し、リンギングとサチュレーションの度合い調べ、スイッチング損失を実測する。

2、 スイッチング遅れの時間を調べる。

3、 寄生発振のマージンを調べ、できれば、スペクトラムアナライザーで確認する。

4、 赤外線温度計で発熱を調べる。

5、 ヒートショック、ヒートサイクル、加熱、過冷却、低負荷、高負荷、エージング試験を行う。

6、 EMIが問題ないか、電波暗室で調べる

7、 これらがクリアーできる回路定数でPFC回路を組みなおす。

 



(4)自宅での限界

 あれこれ書きましたが、自宅にあるような限られた設備では、これらの全部はできず、2SK790での実験というス

タンスだったので、自分の五感とあり合わせの測定器だけで、端折ったやり方をしています。友人も何とかMacが

使えるようになればOKというスタンスでしたから、私自身の指による温度検知や、歳で鈍った目と鼻でのチェック

での修理・改造を認めてくれました。最悪、火災や爆発が起きても御免で済ませられる間柄ということもあっての

実験でしたから、あくまで、そういうレベルです。決して、良い子はそのまま真似をしないよう、お願いします。問題

が起きても責任は取りようがありませんから、どうしても真似したい人は、100%自己責任でお願いします。



 では、回路をどう変えたかと言うと、ゲート回路と直列に入っている100Ωと並列に22Ωを付けただけです。合成

抵抗で18Ω程にしたのですが、この訳は、上で挙げた、1,2,3をクリアーするのに、22Ωのパラ付けがオシロス

コープで見て、ある程度は効果的だったからです。本当は、もう1ランク下げたがったのですが、手持ち部品が無

かったというのが正直なところです。リンギングは問題にするほどのレベルではなかったので、スナバ回路はその

ままです。


  3については、中古で買って、直し直し使っているオンボロなスペクトラムアナライザーで確認しましたし、ラジオ、

テレビ、HF帯やVHF帯の無線機でも調べてOKでした。

 については、150Wの負荷で、ヒートシンクに自身の指を当てて確認しましたが、基板剥き出しの状態で、冷却

ファンを停めていても、ヒートシンクに、十分に触っていられる程度の発熱で収まっています。

 


(5)負荷試験の方法

 負荷試験のダミーロードには、電子負荷などという便利なものは自宅になく、車のヘッドライトとハードディスクを

使いました。ロービームとハイビームのフィラメントを並列にして、5Vラインの負荷にし、12Vラインの負荷にはハ

イビーム専用のハロゲン球を使っています。3.3Vは5V系と元は同じ巻線なので、特に負荷を付けていません。24

Vラインは、電圧を測っただけで、適当な負荷がなく、無負荷です。


 車の電球は、突入電流が大きいので、ON/OFFの繰り返しはストレステストにもなります。ヘッドタッチして、異音

の出るハードディスクにこれらを付けて、ON/OFFの繰り返しを百回した後、4時間の連続通電をして、の真似事

の一部をやりました。光を見ていなくても、ハードディスクからは、チリンチリンと異音が出ている内は、電源は動

作している証拠なので、このダミーロードは他の作業を並行してやっているときは、なかなか重宝です。




写真8 FETと22Ωを付けて、通電試験中




写真9 スイッチング波形(ソース・ドレイン間) H≒5μsec/Div(バーニアONのため精度は?) V=200V/div



 オリジナルのダンピング定数では、オフ時の立ち上がりがやや鈍っていて、オーバーダンピングな感じがします

が、熱的には問題なさそうで、EMIを安全方向にしておくには、敢えて、定数はいじりませんでした。




写真10 ケースに入れて、エージング中



 は自宅ではとてもできないので、やっていませんが、の結果から、経験的に大丈夫かと思います。エイヤーで

端折ってしまったところはありますが、ちゃんとダミーロードでは動作するようになりました。
 



(6)送り出しとその後

  友人は大阪にいるために、宅急便で送りましたが、Mac G4に実装したら、ちゃんと使えるようになったと、大い

に喜んでくれました。その後、1ヶ月余りが経過しましたがMac G4は、問題なく動作しています。





3 おわりに

 FETを高速スイッチングさせるアクティブPFCは400V近い大振幅のパルスを作り出す関係で、寄生発振が起き

やすく、高次高調波もVHF帯の上限域までもあり、安定動作以外に、スイッチングの効率とEMIの関係も考慮して、

各定数は決めないといけません。今回、容量が低下していたブロック電解コンデンサも交換しておきましたが、交

換しなくても、一応、電源は動作していました。しかし、電解コンデンサはアレニウス則に従い、確実に容量低下

進む部品なので、この先のことを考え、国産の同等品に交換しました。
 


 尚、オリジナルのFETのW20NM50 の1つは生きていたので、自分のPC用電源のPFC回路にて、ゲート抵抗を

100Ωで使ってみると、明らかに、アンダードライブの傾向がありました。最近のFETなら、100Ωでも、十分に駆動

できるFETがぞろぞろとありますが、Mac G4の設計された時代のFETで100Ωはゲート容量やgmから考えて、ちょ

っと大き過ぎのような気が私はします。このモデルは市場不良の中に、電源のFET壊れのが多く、サーマルブレー

クダウンだと言う、アメリカ人の仲間の話もあり、100%私の想像ですが、EMIとのからみで、100Ωという大き目の

ゲート抵抗がこの電源設計者は選定してしまったようにも思います。ゲート抵抗は、両刃の剣のようなところがあ

り、大きめに選ぶと、寄生発振やEMIが有利になる反面、駆動不足による発熱とスイッチング効率の低下が起き

ます。今回のように、代用FETで修理をする際には、ゲート抵抗の選定し直しに、十分な注意が必要です。
 

 

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   製品の改造を行いますと、保証が無くなるだけでなく、火災等が発生する可能性が

   あります。よって、修理や改造はあくまでも、自己責任でお願いします。By Dyna

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 ども、Dynaです。

 はじめの内は、何とか理解できたのですが、途中からチンぷんカンプン状態になってしまいました。何となく言い

たいことは分るのですが、いかんせんか専門用語の連発で・・・・・・。

 でも、写真等があるので、意味は何となく伝わります。

 当方もFET交換を行ったことはありますが、実施例をそっくりそのまま真似ただけで、まったく裏づけ等は行って

いません。ですから、火災等の心配がまったく無いわけではありませんね。

 完全に理解はできませんでしたが、主旨は何となく伝わりました。ありがとうございます。今後のジャンク道に生

かせるようさらに勉強したいと思います。

 

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