映画「聖職の碑」を見終えて<2003年10月18日(土)>

    森谷司郎監督、新田次郎原作、鶴田浩二、岩下志麻、三浦友和、大竹しのぶ  東宝  昭53


緊急情報 

映画の放映情報が入りました。なかなか放送されないレアな映画ですので、ご覧になりたい方は要チェックです。

 「映画をご覧になるまで苦労されたようですが、今スカイパーフェクトTVのチャンネル 261(チャンネルNECO)で「聖職の碑」を
放映しています。今日(平成16年1月6日)、ありましたので、
次回放映は(平成16年1月)15、21、31日です。
CMが入ることもないのでいいですよ。もうご覧になられているので、どうかなと思いましたが、お知らせまで・・・」

詳細は   平成16年1月15日   21:00〜
                 1月21日  15:40〜
                       1月31日  17:10〜 
です。
読者のOさんより (平成16年1月6日) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・情報ありがとうございました。Dyna


(はじめに)

 今から四半世紀まえ、そう25年前の話ですが、大学3年生であった私は、夏休みに帰省した際、郷里で映画の撮影があると聞き、

街中が沸いているのを感じました。当然私も興奮して、どこで撮影しているのか、俳優は誰かと、興味津々でした。それは、

映画の題名があの新田次郎作の「聖職の碑」であり、信州伊那地方の方は誰もが知っている話だからです。

偶然の話ですが、同時期に「多羅尾伴内」の映画が実家付近で撮影されたようで、本当に街が映画で沸いていました。

 俳優の名前を聞いて驚きました。日本の一流陣がオールキャストではありませんか。これは、後生に残る名画になる。そう思った

私は、近くの天竜川で撮影があると聞き、走っていきました。国道153号線バイパスは渋滞し、やじうまが河川敷に群がっている中、

三浦友和と中井貴恵が散歩するシーンをじっと見たのです。(映画ではほんの数秒でした)

 

1 月日は流れ

 東京に戻った私は完成した映画を見る機会は結局無く、見たいなと思いながらも、何と25年の月日がたってしまいました。

どういう映画なのか、一般上映されなかったような気がします。結構、注意していたのですが、東京では見ることができませんでした。

ビデオテープやレーザーディスクも探しましたが、ありません。どうも、制作がシナノ企画ということで、配給の関係か、一般に

流通していなことが分かりショックでした。あれだけの俳優が出演しているのに、完全なマイナー映画になってしまったのです。

見たい、見られないを繰り返しているうちに頭の中から薄れていき、ついには完全に忘れ去ってしまったのです。

 インターネットにはまっていたある日、突然思いつきました「検索すれば良いのでは」と。早速実行してみると、何件かでてきましたが、

どれも見られる情報ではなく、単純なデータのみで不満はつのるばかりでした。でも、そんな中で、唯一見つけたHPに何と、私と同じように

「聖職の碑を見たい、情報を求む」と記載されているHPに遭遇しました。そして情報を見つけたら、お互い相互連絡をとることにしたのです。

その後も、放送されるのを調べる月日が続きましたが、その内に希薄になり、またしても年月が過ぎてしまいました。

そうこうしている間に、プロバイダーを変えたりして、連絡が取れなくなっていましたが、何年か後、インターネットで「聖職の碑」を

再度調べているうちに同じ方に出会い、放送されたものを録画してあったということで、ビデオテープを貸していただく

ことができ、初めて見ることができたのです。(何回か連絡をいただいたようで、大変失礼しました)

 

2 感動の連続

 見て感激しました。それは、遭難した話のことではなく。聖職である教職員の質の良さ、レベルの高さを感じたからです。

勿論、映画ですから全てを真実として捉えてはいけませんが、確かにそういう先生が多かったと思います。

 信州は教育県であると聞かされていた当方は、高校までその地で生活しましたが、特にそれを感じることはあまりありませんでした。

しかし、東京に出て、また、子供を学校に行かせる立場になって、教師(親も同じですが)の質ややる気が子供の教育にとても、

大きく影響することが分かり、信州の教員が全員良いとは言いませんが、やはり質は高かったと感じました。

 映画の中でも鶴田浩二の赤羽校長が言っていました。「伊那は山ばかり、山しかない、でも、だから良い子が育つ」と、

確かにそう思います。当たり前ですが、遊ぶところは山と川です。(今は街がありますが)基本的に貧しいから、皆、一生懸命

働きます。(勿論例外はありますが)冬は厳しいから家の中でじっと耐えることをしっています。こんな環境だから、まじめな子供が

育つのでしょう。(しかし、最近は知りません。) 当方は、あまりにまじめな社会が、堅苦しくていやで東京に出てきました。

 しかし、今、子供の教育で大いに悩んでいます。自分たちが受けてきた教育が当たり前と思っていたのに、そうではなく、自分たちと

同じくらいの教育を受けたければ、私立に行かせ、高い費用をかけなければいけない。かけなければ、公立に行くことになるが、

まるで落ちこぼれのように思われてしまう社会環境があるため、矛盾を感じながら無理してでも行かせる。

 一方私立と公立の差が広がり、公立にはトップレベルの子がいなくなるとともに悪循環して、どんどんレベルが低下していく。

公立の方が圧倒的に多いのであるから、国レベルでみると教育レベルは下がる一方ではないのか。

 つまり、親たちはお金を異常なまでも使いながら、結果的に日本の教育レベルの低下に拍車をかけているのです。

 

3 西駒登山

 映画の西駒ヶ岳登山は、伊那地方の中学生は今でも行っています。当方も登りました。勿論、遭難した過去がありますから、

準備は大変です。まず登山専門の授業があり、試験に合格しなければいけません。そして、ふもとで模擬登山をするのです。

高山植物も丸暗記させられます。結構真剣に勉強しました。なぜなら、行けないと男として恥ずかしかったからです。

 25年前でも、すでにロープウェイがあり、いざとなれば利用もできますが、そうはいっても、山はやはり危険です。

確か、昭和50〜51年頃の登山で、後輩が雷に打たれ大怪我をし、朝日新聞に載ったのを記憶しております。

それだけ、今でも危険なのです。でも、登山は人を鍛え、団体行動の重要さとノウハウを把握できます。そして、組織が一丸

となって行動するため多くの勉強ができるのです。人生には大きく役立っていると今でも思っています。

 しかし、私には一点だけ汚点があり、今でも思い出します。それは、休憩時にチョコレートを食べていた私に、友人が分けてほしいと

言ったのに、なぜか「いやだ」と言ってしまったのです。こころでは「いいよ」だったのに、反対のことを言ってしまったのです。

登山を思い出すたびに、なぜ、あんなことを言ったのだろうかと思い出します。田中君ごめんなさい。

 

(おわりに)

 映画を見終えて思いました。「この映画は伊那の人でないと分からないかも」と。内容がまじめすぎて現代では合わない。

また150分と長すぎて、無理があるかも知れません。映画「八甲田山」と同じような作りを感じますが、遭難については

もう少し省略したほうが良かったのではないでしょうか。それよりも「白樺」に染まる若き教師と保守的な信濃教育会との闘いや、

その間で苦悩する校長の人間模様だけで十分でした。どちらかというと、そちらの方が深くて好きでした。

 あと、今まで、遭難したのになぜ「記念碑」なのか、自分も長い間分からないで苦しんでいました。その辺のいきさつ、葛藤、子供を

亡くした親達との軋轢などもっともっと表現してほしかったです。北小路欣也の苦労や三浦友和の成長がもっと見たかった。

三浦友和も最後は校長になって、西駒に登って終わるとか。

 25年の懸案が解消されました。映画を見終えてこんなに高ぶったのは久しぶりです。近年の映画は視覚的に発達していますが、

中身が薄いような気がします。そして、今の日本の教育レベルの低下も憂鬱になります。日本経済が低迷していますが、

教育がこんな状態ではまだまだ下がって行くでしょう。立ち直れないかも知れません。

 自分も何かしないといけません。やはり、それは教育かな。結果が出るのには30年はかかるでしょうが、今止めなければもう

あとがないかも。とりあえず自分の子供だけでなく、地域レベルで「良いことは良い」「悪いことは悪い」と言えるような

教育のボトムアップを自分も積極的に行っていこうと思います。

                                            平成15年10月18日  By Dyna

 

 

 

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