高木産業製ノートブック PNIV-PV1000U 修理成功!     H18.08.17   

ども、Dynaです。

 当方のHP「ジャンク あげます無料」で話題になった高木産業製ノートブックPNIV-PV1000U

、CPUが1GHzというこのHP開設以来の高スペックノートでした。

 果たして、修理できるか、どうやれば直せるか興味深々でしたが、見事成功されたようです。

今日ここにレポートを頂きましたので、拝見させていただきましょう。


はじめまして。山ちゃんと申します。

Dyna様としんたろ様のご好意により、「ジャンクあげます無料」のコーナーで紹介のありました
高木産業製ノートブック PNIV-PV1000U を譲っていただきました。その節はお世話になりました。
改めまして御礼を申し上げます。約束通り修理レポートを簡単ではありますが報告させていただきます。


 さて、物を受け取り早速症状の確認です。受け取り時にしんたろ様より「すぐにシャットダウンが起こります。

少なくともOSのインストールは無理です。」という前情報をいただけましたので、どの程度の頻度でシャット

ダウンや意図しないときに起動が起こるのかを実際に確認を取ってみました。

スイッチON! 「フォ〜〜〜」(ファンの回る音)
とりあえず第一印象は「ファンの音が意外と五月蝿い」ということでした。
5分後…  いきなりシャットダウン
全くやる気無しなヤツです。
そうかと思うと1分もしない内にスイッチを押さないのに起動し、勝手にやる気を見せたかと思うと
今度は1分ぐらいでシャットダウン。面白いので少し様子を見てみると意図しないときの起動は
ほぼ同じ間隔で起動するが、起動出来ている時間がだんだん短くなってきます。



 どうやら原因はコンデンサ関係か、どこかショートしている可能性が高いような気がします。コンデンサ関係で

ACアダプターが壊れているものを以前DELLで経験しているので、とりあえず元の出力(20V 3.0A)を確認して、

手持ちの物の中でコネクタ形状が同じもので容量が近いNECの19.5V 3.5Aを選んで取り付けてみました。

期待を込めて、スイッチON!
2分後…  いきなりシャットダウン



 世の中そんなに甘くはありませんでした。もっともこの程度で終わってしまうとレポートにならないし、私の

欲求不満も溜まりますので困りますけど(笑)。

 レポートに成らないので詳しくは書きませんが、一応分解前にメモリーとCPUはこちらで正常と確認されて

いるものを取り付けて起動確認をとりましたが結果は変わらずでした。

コンデンサ(ACアダプター)でもない、CPUでもメモリーでもない。どこかショートしているのでしょうか?

それではおまちかねの分解です。



 まずキーボードが邪魔なので外します。写真1の赤丸の部分にキーボードを固定しているノッチがありますので、

楊枝か何かで押し戻してあげると簡単に手前から外れます。

写真1  写真2

続いて裏面の6つのネジをはずします。ひっくり返してパームレストが簡単に外れます。

写真3  写真4

 てっきりパームレストと一緒にマウスパッド周辺の部品も外れるのかと思いきや、プラスチックの部分だけ外れ、

配線を気にしながら外さなくても問題ない構造でしたので楽でした。次いで液晶パネルを外します。根元の4本の

ネジとコネクタケーブルを外します。コネクタケーブルにはアースケーブルも付いているので外すときは忘れずに。

この段階で表から見える部分にネジが、まだいくつか残っているのが見えます。分かりやすいところからCPU

クーラーとHDDマウンタを外します。パソコンが発売された時期を考えれば当然なのですが、CPUを見てみると

残念な事に「SL4MF」でした。cC0のCore Steppingの中では最高峰のCPUです。

写真5 写真6 

写真7 写真8

CPUのデータシートです。
sSpec Number  SL4MF
Processor Frequency  1.00 GHz
CPUID String  0686
Package Type  370 pin
Core Voltage  1.700
Bus Speed   133 MHz
Thermal Guideline  26.1W
Core Stepping  cC0
Thermal Spec  70ーC
L2 Cache Size  256 KB
Manufacturing Technology  0.18 micron
L2 Cache Speed  1.00 GHz
Bus/Core Ratio  7.5


 出来れば、L2 Cache Sizeが512 KBの「SL6BX」に載せ変えられれば最高なのですが、おそらくマザーボードが

対応していないので無理でしょう。もっとも修理後、人の手に渡る予定なのであまり確信のないことをして壊す事

は何としても避けねばならないので、今回はいずれにしてもパスです。

 話を戻しまして、分解を進めます。プリンターポート等についている六角ネジを外すと最後のガワが外れます。

かなり力を入れて少しプラスチックを変形させながら、大胆かつ慎重に外します。一番緊張して外したパーツです。

写真9 写真10

 最後にマザーボードが残ったかと思ったら、マザーボードを固定しているマグネシウム基盤が外れません。よく見ると

いくつかネジが残っています。これらを外してやっとマザーボードが裸になりました。ここまでの所要時間約30分。

写真11 写真12 写真13

 まずこの段階で思ったこと。

「すんげーデカイコンデンサが乗っている」ことと「すんげー埃が乗っている」ということでした。有難い事に?

コンデンサーがマザーボード上にあります(こんなにディスクトップ寄りなノートのマザーボードは始めて見るので

驚きましたが)。とりあえず初期の仮説がまだ生きています。まず、コンデンサが妊娠していないか、すでに懐妊後

になっていないかを調べます。ちなみに余談ですが、2002年暮れぐらいから一部の台湾メーカーのコンデンサから

液漏れが盛んに報告されるようになりましたが、これは4級アンモニウム塩という電解液が原因でした。この電解液

を使うとESR(コンデンサの持つ抵抗成分、等価直列抵抗)を小さくできるので一時期もてはやされました。日本国内

では1990年代半ば頃まで使用されていたみたいですが、液漏れ防止策を施したものがほとんどです。2002年に問題

になった物は製造プロセスの管理が甘かったらしく、電解液の中に水が含有しているものを使用し、最終的に液漏れ

やドライアップが設計よりも早い段階で起きたということです。

 まあ、そんな話は今はどうでも良いので、コンデンサをなめるように見ました。どうやら妊娠&懐妊後になっている

ものはありませんでした。そこで綿棒で丁寧に埃を取り除いてあげます。

写真14

 かなり綺麗になったところで、簡単に組み立て外部液晶で動作を確認。

私の愛情が足りないのか、このパソコンは相変わらずやる気を出してくれないようです。

そこでもう一度M/Bを確認すると、CPUの廃熱方向とコンデンサの位置関係が気になりました。

写真15

 この写真だけでは分からないかと思いますが、ファンの向きがCPU側からコンデンサー側にモロに廃熱を持って

行きます。そうなると考えられるシナリオは先ほどのウンチクのようにCPUの廃熱がコンデンサの電解液を蒸発

させ(ドライアップ)、結果ESRを増大させ動作不良を起こしている可能性があるということです。このシナリオ通り

だとするとこの挙動不審な点が全部説明が付きます。早速写真15に写っているコンデンサの種類を調べてみま

した。右からA・B・A・A・Cという種類が並んでします。

Aコンデンサ
Rubycon製 ZLシリーズ 6.3V 1200μF 105℃ 寸法=10Φ×17mm
     カタログ値から定格リプル電流=1430mA r.m.s/105℃ ESR=38mΩMAX

Bコンデンサ
OS CON(SANYO製) SPシリーズ 2A 105℃ 820 寸法=10Φ×10mm
     カタログより4SP820Mという型番のようです。
           定格リプル電流=1260mA r.m.s/105℃ ESR=12mΩMAX

Cコンデンサ
TEAPO製 SCシリーズ 25V 470μF 105℃ 寸法=10Φ×12mm
     カタログ値から定格リプル電流=900mA r.m.s/105℃ ESR=86mΩMAX



 さて、コンデンサを交換する時にいくつか気にしなければならない事がありますが、その一つにグレードが

あります。CPU周りに使用するコンデンサは出来るだけ良いグレード(低ESR)の物を使用して損はありません。

今回の場合は特にRubycon製のZLシリーズではなくせめてMBZシリーズを乗せておいて欲かった感があります。

おそらくここが今回の不具合の原因でしょう。次にOS CONですが、これは電解液を使用していないので今回の

交換は考えなくても良いでしょう。続いてTEAPO製は一番熱の掛からない位置にあるので問題は無いと思います

が、一応交換対象にしておいた方が無難でしょう。



 ここで大きな問題が一つ。秋葉に行く時間がありません…

仕方がないので、ネット上で購入を試みます。最近はYahooオークションでコンデンサも手に入るのでこれで済ませます。

SANYO製 WGシリーズ 6.3V 1200μF 8Φ×16mm
SANYO製 WGシリーズ 25V 470μF 8Φ×20mm

この2種類を購入しました。残念なことに25V 470μFはかなり全長が長いです。ダメモトでの購入です。
 



待つこと3日…

 コンデンサが届きました。早速交換です。ここで慌てないで欲しいのですが、きちんと半田ごての容量を確認して

下さい。30Wしか持っていない方は止めた方が良いでしょう。最近はターボ半田ごてという便利なものがあるので、

これを利用するのも手です。さて、半田ごてが用意できたら作業に入る前にデジカメでコンデンサの向きを写真に

撮っておくことをお勧めします。コンデンサーには極性があり、+と−を間違えると大変危険です。新品の場合、

足が長いほうが+ですが、今回のような場合は、すでに足を適当な長さに切られているので判別が出来ません。

その場合は、アルミ電解コンデンサは国際規格により−側に帯マークを付けるルールになっていますので、これを

利用します。もちろんデジカメで写真を撮る時は、この帯がどちらを向いているか後で確認が取れるように撮って

ください。「そんな面倒くさい事をしなくてもM/Bに極性がシルク印刷されているジャン」と言う声が聞こえてきそうで

すが、それを頼りにする場合は隣り合うコンデンサの印刷と間違わないようにくれぐれも気を付けて作業をしてください。

写真16

 さて、ウンチクはこのぐらいにして、実際の交換に入ります。コンデンサは今説明したように2本の足が有るので両方

いっぺんに半田ごての熱をかけて外すのは難しいです。そこで片方ずつゆっくり引き抜いていきます。熱をかけて+側

の半田が溶けたら1mm動かし、今度は逆の−側の半田を溶かして1mm、次に再び+側を1mm、と言うように片方づつ

力をかけずにゆっくり引き抜いていきます。力をかけて抜くと折角のスルーホールを破損させて台無しにする可能性が

あります。という作業をチマチマ辛抱強く行って、交換終了!

写真17

残念ながら25V 470μFは、案の定、長さがありすぎて収まらなかったので今回の交換は見合わせます。つまりRubycon

製の3つのコンデンサがSANYO製に置き換わりました。とりあえずダメモトで動作確認を取ってみます。M/Bをダメにし

ていなければ一応電源は入るはずです。


スイッチON!   緊張の一瞬です。
「フォ〜〜〜」(ファンの音)
やりました。とりあえずファンは回り始めました。第一関門突破です!
電源を入れ暫くこのままで放置します。



30分 アホみたいに画面を眺めていました。
問題が見られないようなので少しガッツポーズをしながら組み立てることにします。

組み立ては逆の順序なので、はしょります。




 とりあえず、Windows Meをいれて折角なのでDVDも再生してみました。

ここまで特に問題もなくインストールできました。とりあえず不具合が直っているか確認のため、このまま翌日まで

電源を入れたまま放っておきましたがシャットダウンすることは有りませんでした。無事修理は完了したようです。



 その後、とある人にこのパソコンは嫁いで行きましたが、修理後2ヶ月しても特に問題なく使えているそうです。

改めてDynaさまとしんたろ様に感謝いたします。

 

→凄いですね!!当方もそれらしい症状(多分)のPCを沢山見てきましたが、コンデンサー原因がと思っても、

 液漏れや膨らみが見られないので、大方はあきらめてしまっています。今回のレポートを見させていただき、

 膨らんでいなくても症状が出ているものもあるのですね。とても勉強になりました。機会があったらチャレンジ

 したいです。レポートありがとうございました。 By Dyna

 

 

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